ターン
こんにちは。薬剤師のHです。今回もおすすめの本を紹介させていただきます。
ターン
著:北村 薫
交通事故で意識を亡くした主人公が目を覚ますと、そこはいつも通りの自宅、いつも通りの外の風景。しかし、この世界には主人公以外の人間、生物は他におらず、ある時刻になるとどこに居ても、何をしていても、自分の意識・記憶以外の全てがリセットされ1日前の同じ時刻、同じ場所に戻ってしまい繰り返されるというストーリーです。
付記(あとがき)では、「会社に勤めていて、毎朝同じ時間に目覚めて、同じ電車に乗り、同じ仕事をして帰る。家庭の主婦の方が、洗濯をし、育児をし、買い物をし、食事を作る。そういう中で、ふと、疲労と虚しさを感じてしまったら、それは時の《魔》に捕まったようなものです。」と、ごく普通の人に、ごく一般的に起こることを書いたつもり、と語っています。
孤独な時が永遠に続くのかと読み進めていくと、突然、家の電話が鳴るシーンや他の人物が関わってくるシーン、子供の頃の何気ない親子の会話の記憶などから自分が存在していること、存在していたことを初めて感じることになり胸が熱くなります。
人は独りでは生きていけず、他人と関わることで嫌な思いをすることがあっても、自分の仕事を認めてもらえたり、生きがい・やりがいなど精神的な拠り所となり得るのもまた他人なのだとこの本を読んで感じました。
機会がございましたら、ぜひご一読ください。